長寿
妻帯の同級生がこの夏に単身インドネシア奥地の秘境に原住民を訪ねると聞いて。
かの番組が当時の少年たちに与えた影響は計り知れず。カメラが捉えた映像が何よりもの証拠。双頭のヘビにジャングル奥地に潜む猿人バーゴン。もう一方の雄、プロレスはレフリーのカウントにどことなく「興行」なるものに気づけども、こちらは本物と信じて疑わず。
あれから四十年、本屋にて見かけし一冊「ヤラセと情熱-水曜スペシャル川口浩探検隊の真実」(プチ鹿島著)に気づかされる衝撃の事実。いや、それ以上に今日でいう「フェイク」生む制作側の心理を学ぶに良書か。
謎を追え、とばかりに押し寄せる報道陣に出演を待ちわびる御仁少なからず。それこそが市議の実績などと申さぬまでも、おらが区が全国的な注目を集めるは結構なことで。まぁ確かに元気というか「手ごわい」高齢者が少なからず。
理由は何か、などと役所に迫ってみても述べられるは所感位なもの。やはり区内をくまなく「探検」する我々こそが真相を知り得る稀有な存在、んな訳ないナ。
その白眉たるや男女「ともに」第一位、ばかりか、同じ市内の他区が上位に含まれぬ不思議。挙げられる要因の筆頭や富裕層の多さに、持ち家率の高さ云々と、男性二位に横浜市青葉区が入っとるし、下位の顔ぶれ見れば。
確かに序曲ウィリアム・テルに一山当てて以降、美食家に生きたロッシーニとて長寿であったし、食にスポーツ、健康意識もそれを支える財力があってこそ、富こそが長寿の秘訣、つまり、おらが区こそ、などと胸張るは浅慮。
やはり、ストレスこそ万病の原因、長寿の大敵であって。財の多寡以上に貧乏性がおらぬ、というか、各自それなりに身の丈に合った生活を。心身の「心」こそ。あくまでも肌感覚の勝手な推論だけど。
さて、名演説はソレのみならず。いつぞやに請われし応援の弁。世辞を言えぬ性分にて、「正直、彼のことは知らぬ。が、幼少からの同級生が秘書として仕えているその一事を以て本人の人柄が分かりはせぬか」と壇上にて一席ぶった。
そんな名物秘書が主の元を去ると聞いて慰労会の申出が多く寄せられるは秘書の人柄に負うところ大なれど、聞かれるは私の予定。いや、私など通さずに御自由に。余人を以て代えがたく、気になるは退職の理由。
よもや年齢を理由に働きが足りぬ、などと一方的に解雇されるものにあるまい。働き足りぬは秘書ならぬ主であって、立場上、逆らえぬならばこの隠居の身が主との直談判に及んでくれようぞ、と水を向けるも、立つ鳥跡を濁さずか、郷里に帰って農業に身を投じる、と。
そう、農業といえば今日も一枚の写真を添えて。農機具が照らし出す畑にて収穫に追われる農夫たち。夜明け前の畑に灯りが点在する様子を山から撮影した幻想的な一枚は村を紹介するにこれ以上のものはなく。レタス生産で注目を浴びる長野県川上村でかつて見た写真が忘れられず。
マラソン当日の朝の光景。大地に生きる人の営み、ミレーの「落穂拾い」を連想させぬか。
(令和5年5月30日/2784回)