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2019年2月

2019年2月15日 (金)

朗読

故蜷川幸雄氏が創設された市民劇団の公演が好評と聞いた。プロにあらずとも役者魂というか迫真の演技に心動かされること少なくなく。ふじたあさや氏の脚本演出による「劇団わがまち」の公演「みすゞ凛々」を見る機会に恵まれた。夭逝が悔やまれる詩人、金子みすゞの生涯を描いた作品であって、ピンとくるのが東日本大震災後に流れたCM、公共広告機構、ACジャパンの「こだまでしょうか」が当人の作。

詩といえば国語の教科書に見かけた位で、詩人と申してもドラクエのキャラ位しか思い浮かばず、それとて戦士や魔法使いに比べ見劣りするというか影薄く、ならばいっそ「遊び人」のほうが意外性に秀でて。されど、小説家や俳人等、文章に携わる異種格闘技戦あらばこちらが最強ではないかと酒井順子さんのエッセイに読んだ。

詩の朗読に歌、出演者のYさんから届いたメールに知る稽古の様子。朗読された「積もった雪」の詩が良かったナ。「上の雪さむかろな。 つめたい月がさしていて。 下の雪重かろな。 何百人ものせていて。 中の雪さみしかろな。 空も地面もみえないで。」と雪の心境を詠むなんてのは凡人及ばず。

代表質問が迫る。労こそ厭わぬも目立つのは好かぬ。やはりやら「される」のと自ら「やる」のでは大きな違い、予算審査を含む定例会の質問者は団長と「慣例」で決まっているもそんな悪しき慣例など...。どこぞに適任者おらぬか。

散るぞめでたき桜花、漫画の主人公とはいえ何とも粋な命名はスラムダンクの桜木花道。それが十両関脇ならぬ横綱の引退とあらば断髪式といかぬまでも花道位は...。裏工作が奏功してそちらに変更になったものの聞かれる声は「(役回りを)逃げたナ」。

いやいや、およそ初陣の頃などはエラそうに多選の弊害を説いてみてもいざ職を辞するとなると退職後のツテがある訳でもなく、惰性に期数を重ね、しばし後は「役職」が目的となり、やがてはそれまでの経験を後身の為に...などと自らの正当性を維持する為の独善的な解釈が自らの中で形成されていくのがオチなれど、そりゃ何もセンセイの出処進退に限らず、市の事業とて同じ。

それが広く社会の役に立つならば支援の意義はあろうけど、仮に公的支援を行うにせよあくまでも助走の為の呼び水的な次元に留められるべきながらいつの世も模索される存続の理由。下手に関与するよりも民の自由競争に委ねるが最善。過去の投資が足枷となり撤退の判断鈍ること往々にして深傷を負わぬ為にも...まぁあくまでも悲観論に立った話ながらそんな原稿をそっとしのばせておいた。

他に譲って登壇を回避出来たのは本望なれど、質問者が引退を決断した最古株とあっては何かと世話が焼ける...違った、気を揉むこと少なくなく。本来であれば質問者が担うべき枕詞、いわゆる前文を任せるべきか否か、リハは演じてもらうべきか、漢字のルビはどこまで...バカにし過ぎだナ。

百頁を超える原稿の朗読、リハは代読でも...と打診すれば気遣い無用と返事が来た。老兵は死なずただ去り行くのみとは申せ、余力ある以上は甘やかす訳にいかぬ。

(平成31年2月15日/2482回)

電子書籍「一日一話」

「一日一話」表紙

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2019年2月10日 (日)

先輩

大手振って巷を闊歩する芸能人、いわゆる芸人とてかつては海山稼ぐもの、つまりは「やくざな世界」に身を置くものとしてそんな大そうな身分ならず物書きも同じと五木寛之氏の著書に読んだ。本来は厄払いなれど高台に立たば否が応でも目立って余りある訳で宣伝効果は抜群、安からぬ対価を払ってでも...。

いつぞやに慶事重なり代理にて妻に登壇させたのだけれども群がるは教祖に救いを求める絵図が如く刹那の優越感にあれこそが勘違いの元凶。年に一度の豆まきにしてその状態なのだから日々の舞台ともあらば...と五木センセイ以上に手厳しく。やはり下からの目線ってのは忘れちゃいかんナと。単にへりくだればいいってもんではないけど。

大学の「先輩」である(といえば年齢がバレてしまうのだけれども)無所属の小田理恵子センセイが三期を前に不出馬と聞いた、というか新聞に読んだ。本人曰く、いや、記事によれば、批判的なことを言えども議員同士の接点がないためか、いじめられ「さえ」しない。議員控室は会派ごとにて会派違う議員が日常的に会話をする場所なく、議会棟にコーヒースペースをと過去に提案されていたと初めて知った。三人寄らば文殊の知恵とばかりに本市臨海部のナノ医療イノベーションセンター(iCONM)などでも対岸見渡せるフロアには分野異なる研究者同士の交流スペースがあって大変好評と聞く。

能天気にて孤独を気にせぬタチなれど「寄らば大樹の陰」を座右の銘とする小生。群れず孤高を貫くといえばカッコはいいけれど追い出されたとか党がなくなっちゃったとか、最近はそんな無所属も少なくない。選挙を前に政党間の抗争に埋没しかねぬ危機感は人一倍。一人とて会派と同列に扱うべきなんて声もあるんだけど一人か二人かは大きな違い。勝手放題の一人に比べて複数とあらば不都合や曲げねばならぬことも「多く」ある訳でその為の対価として付与される団体交渉権に質問権。

三人ぽっちで徒党を組んで振り回されてはかなわん、なんて無所属を狙い撃ちにしたものか、離合集散を繰り返すどこぞの政党への牽制か、参入の障壁を高くすべしなどと部屋内の意向を受けて「代弁」しとるだけなのだけれどもその手の話は善意的に解釈されることはまず「ない」から芽生える不信感に残る遺恨。こちらに向けられる冷やかな視線に誤解を解くにもコーヒースペースなく...。何も苦悩は無所属だけ専売特許ではない。

さて、話題の県議選。かつて推薦されていた保守系無所属のセンセイ、再三の入党要請に応じきれずに対抗馬として擁立されたおらが候補。そちらを応援するは当然にせよ、それを機にあえて相手方に絶縁状を送る必要はない訳で、会えば雑談を交わすその行為に謀反の心アリなどと疑念抱かれ。また、それを面白おかしく吹聴する輩がいたりするもんだから両天秤に二股かけてオイシイとこどりではないかとの陰口。

そんな風聞を耳にすれば身内候補とて募る鬱憤に向こう側とて手のひら返された恨み骨髄、つまりは二股どころか四面楚歌が正しく、いつの世も一番怖い敵は身内にあり。名が売れてなんぼの世界、打てど響かぬとの「先輩」の悩みに比べれば陰口を叩かれているほうが幸せかもしれぬ。

(平成31年2月10日/2481回)

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2019年2月 5日 (火)

天賞

事務所宛に一枚の葉書が届いた。差出人は区内在住の方なれど名に覚えなく、はて。達筆で記された内容読めば新年俳句大会において天賞、つまりは選句五句のうち最上の句に選んで貰った御礼とのこと。何とも律義でマメな方ではないか。

これも縁とばかりに自ら押売りに伺えばちょうど御主人が日曜大工の最中にて事情話せば温かく迎えて下さった。エラい人に選んでもらったおかげですと笑顔こぼす奥様、聞けば天賞の「最多」得票だったそうで、こりゃ選挙前に私も縁起がいい、いや、それ以上に私の選句眼も隅に置けぬと悦に入りつつ御自宅を後に。

御礼というか活動資金の足しにと手渡される現金。あくまでも相手の善意にて二人だけの秘密だからそっと着服しても分からんのだけれどもどうせロクな支出にならん訳で子供の年玉が如くそのまま後援会の会計に預けてしまい、出納は全てそちらに任せて残高知らず。不足の際は負担厭わぬと太っ腹を装ってみるも未だ打診なくひょっとすると随分と貯まって...。

そう、実はここだけの話、駐車場の一角に取り付けた後援会の看板の留め金が外れて車を破損させたとか。翌日に菓子折ぶら下げて現地を訪ねれば不運にも外車にてかくなる上は後援会のほうで...ダメか。金銭失うも健康さえあれば裸一貫再起図れるもそれが叶わぬ心境いかばかりか。

初陣以来の一途な支援者Tさんは不器用なれど律儀で人懐っこい人柄に親交少なくなく。大病患われて九死に一生を得たものの、残る後遺症。回復せんと不屈の闘志にて復帰果たすも完治には到らず入退院の日々。昨年末に近況尋ねれば入院中も元気な声にて再会を約束して受話器を置いた。

虫の知らせか、縁とは不思議なものでそこで寄り道せねば会うこともなかった訳で。手すり伝いに歩いて来る様子は見るに堪えず、絶望の淵に立たされたが如く思い悩む陰鬱な表情に声をかけるべきか否か、というよりも声をかけていいものか逡巡せど口が先に動いた。満身創痍の闘病生活も打つ手限られ、月内に「大」手術が予定されているそうで成功率は五割に到らぬとか。で、身辺整理の上、関係者に挨拶をとの医師の宣告に思い詰めて。

相手とて困難と知らば開腹などせぬ訳でやはりそこに見込みがあるから。勝算見込めても悲観的に伝えるのがセンセイの世界。それがドブ板ならぬ生死に関わるとあっては余計に慎重な言い回しに終始せざるを得ない事情は知りつつも術後とて大幅に回復見込めぬだけに言葉に難しく。再会の固い握手を交わし別れたものの、夜に着信があった。

手術前に会うべきか会わざるべきか、悩みはそこにある訳で霧を払った本人の決断に半日限りの運転手役を請け負った。前日は普段着なれど迎えた当日は正装。鳥の将に死なんとする其の鳴くや哀し、人の将に死なんとす其の言や善し、死を覚悟した人物の言葉は重く、涙ぐむことしばしば。緊張ほどけた車中で心落ち着けつつ、最後に向かう挨拶先は仲人親のおらがセンセイ。

あいにくの御不在も玄関の早咲きの梅の花、宿る生命にそんなに簡単に死ねぬものと御子息が声をかける。生きて再び会いに来なくては、まだやり残したことがあると笑顔で別れた。

(平成31年2月5日/2480回)

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