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2016年10月12日 (水)

天才

嫉妬と僻みが蔓延する娑婆とあってはどれほどの弁明を試みようにも詭弁としか受け取られぬのがオチにてさすがにそこまでいくと些か気の毒な気がしないでもなく。兎にも角にも数字だけが目立ってしまうんだけど「12」人目の辞職理由は3万円の不適正支出。額も額だけどその内容は名刺の印刷代とか。

まぁさすがにあの「いかにも」という下品な名刺は論外にせよ、名刺1枚すら公費で負担してもらえない(それは本市も同じ)ことに憐憫の情を抱きつつも、それ以上に懸念するのは...。報道によれば当人は古希のベテラン。向こうは土地の名士が少なくないから仮にバッチを外したとて糊口をしのぐようなことはないだけに「その程度のことで叩かれる位ならいっそ...」と仕事への意欲が失せてしまった可能性はないか。

それが再び脚光を浴びる背景にはそんな世知辛さが絡んでいるように見えてしまうのだが、角栄本が人気。およそ角栄伝説というか逸話はすべからく網羅しているつもりだけど、この御仁ほど人の琴線に触れるというか機微に敏感で表裏を知り尽くすに傑出した存在はいないのではないかと。一応、被告人ゆえさすがに道徳の教科書とはいえぬまでも社会人とあらば三国志と角栄本の一冊は読んでおいて損はない。

ちなみにオタク的見地から申し上げれば最近ベストセラーになったあの本などは字もデカい上に行間も広く、その逸話なども他の二番煎じであって物足りなさが残る。著者が著者だけに内容以上に話題性が部数を伸ばした感は否めず、世の関心を惹いた功績は大なれど内容は初心者向けか。やはり角栄本の中でも秀逸は当人に魅せられて記者からその世界に身を投じた早坂茂三氏の著作。そんな一冊には農耕社会において評価されるのは長い経験とそこから生まれた知恵であって、尊敬されるべきは風雪の歳月を凌ぎ、生きる為の知恵を肌身につけてきた長老とあった。

秋の日は釣瓶落とし。日暮れが随分と早くなった。夕方の事務所に来訪客を受けていたんだけど、そこにひょっこりのぞき込む怪しい影は...おらがセンセイ。聞けばゴルフの反省会の迎えが見当たらずにお困りの様子で送迎を仰せつかった。これが一見億劫にも見えるのだが、そこまで超越した存在にもなればかえって座持がいいというか退屈させぬ話術に人生訓も少なくない。

この前なんぞはやはり長老というか隠居したYセンセイの運転手を仰せつかったんだけど、車内の話題が知事選後の都連の対応に及んだ。当人には公認選考の結果は予見出来たんだろうけど結論が下された後とあっては明らかな叛旗であるばかりかその結論に不服というかゴネているように見えなくもない。結論を待たずしての出奔劇は機を見るに敏か。

本人は咎めなしながらもそれに呼応した7人に下された処分は離党勧告。謀反を企てた以上は厳しい処罰を科さねば他への示しがつかぬ。されど、勝てば官軍で勝敗が逆に振れたことが何とも不運にて執行部泣かせ。規律を維持する為には斬らねばならぬし、斬らねば弱腰との批判が執行部に向きかねぬ。進むも地獄、退くも地獄の状況にいかなる判断を下すべきか。あれはな...と聞いた解説が目から鱗。やはり亀の甲より年の功か。

(平成28年10月12日/2296回)

電子書籍「一日一話」

「一日一話」表紙

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