葡萄
行楽シーズン。「昨日は日帰り旅行だったんだが、あんなうめぇブドウは初めてだ」と齢喜寿にならんとする町会長。「もしや、緑色では?」-「そうそう、良く知ってるな」と会話が続く。
前職時代の先輩がマラソンを始めたそうで請われて大会を御一緒することになったんだんだけど、距離がハーフとあっては減量ニンジンには程遠く、「まぁ何とか」の楽観からか太目残りの出走となった。示し合わせた訳ではないものの、別筋の友人もエントリーされていて先方の好意で宿泊先を御手配いただけば特別優待だとかで格安でリゾートホテルに。やはり友人に恵まれるってのは大事なんだナ。
紅葉の木々と落葉の絨毯に囲まれたコースを駆け抜ける軽井沢リゾートマラソンは昨年に続き二度目。「軽井沢」の名に恥じぬ洒落た衣装に身を包んだ参加者の面々は雪のゲレンデが如く3割増に見えてしまうから不思議。休憩所では御当地の名産がふるまわれるのが一般的なんだけど、信州といえばやはり「りんご」。が、りんご以上に途中で食べた大粒のシャインマスカットが最高に旨かった。巨峰ほどの濃厚さはないものの上品な甘さに種なしであれだけの大粒を皮ごと食べられるなんてのは最高の贅沢で、それまでの難点を見事に克服した品種改良の技術はノーベル賞級?言い過ぎたナ。
味の記憶というのは不思議と残るもので父の仕事の都合で何年か暮らした飯山市で食べたイナゴの佃煮が好物の一つ。信州といえばゲテモノというか珍味が少なくない。海と平野に恵まれた越後の国は食材の宝庫。米に魚と天然の幸が豊富。加工せずともそのまま素材の味で十分。一方の信濃の国といえば海なし県であるばかりか開墾に不向きな山林が大半を占めることから食の加工に知恵を絞った、というかそうせざるを得なかった。
ゆえに越後人は兎にも角にも働きさえすれば食にありつけたが、信州人は生きる上で知恵を絞らねばならず、それが今の教育県に繋がっているのではないかというのが、民俗学的な私の勝手な解釈なんだけど...。逆境こそ人を育てると信じて疑わず、不動のエースのメジャー移籍で前評判は決して高くなかったカープが、一転、それを覆してリーグ優勝を果たした陰には絶対的エースを失った危機感があったはず。最近多いナ、その話題。
そうそう、ブドウといえばワイン。最近のブームも手伝ってか県を挙げての宣伝に余念がない信州ワインバレー構想。その一つにこの千曲川ワインバレーがあって中でも東御市には多くのブドウ畑が点在する。折角の機会とばかりにその一つのワイナリーを訪ねた。シャルドネって品種はその土地と作り手に合わせて様々な顔を見せるだけに困ったらシャルドネに限る。ちなみにシャルドネは白。これが極上の一杯でブドウ畑に囲まれたカフェで飲む一杯にマラソンの疲れも癒される。
が、やはり旬の果物は堪能しておかねばと巨峰ならぬソレを栽培する農家を訪ねれば収穫も終わりに近いらしく生産者の話を聞きながらついつい手が伸び、鱈腹いただいてしまった。金銭に換算すれば...野暮だナ。
(平成28年10月28日/2300回)
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