精神病床
「暴れだしたら止められなくて...泣く泣く警察を呼んで病院に連れて行くんだけど、病院では本人を無理矢理ベッドに括りつけてね。虐待と言われようとも括り付けなければ何をしでかすか分からない。そこでクスリを打たれるとそれはもう廃人のようになってしまって...」と涙ながらに語っていただいた。
そんな壮絶な実態と家族の苦悩を聞かせていただいたのは初当選後まもなくの頃。一見平穏そうに見えた家族にそれほどの苦労があったとは知る由も無かったのだが、以来、何度か御話を聞かせていただき、家族会の皆様の会合にも伺わせていただりもした。
現在、障害には3つの種別、「身体障害」「知的障害」「精神障害」があるが、障害種別に関わらず障害者の自立支援に向けて共通の福祉サービス基盤を確立しようと施行されたのが平成17年の小泉政権時における「障害者自立支援法」であって、その「障害者自立支援法」は難病指定やサービスを拡充した上でこの4月より「障害者総合支援法」として新たにスタートすることになった。
障害者の手帳を持つということはその障害を認めることで様々な給付を受けることが可能になるということを意味するのだが、中でも精神障害は判定が難しく、また、一方で障害種別の中でも後発なだけにサービスが遅れがちな面も否めず、家族がそのことを認めたがらないこともあったりして手帳所持者以上に潜在的な数は多いとされている(ちなみに本市における手帳所持者は約6千人)。
さて、来年度の予算要望に向けたヒアリング。団体の一つに精神障害者の家族会「あやめ会」があって、毎年、要望を聞かせていただくことになるのだが、前述の理由からいつになく真剣に聞かせていただいている。
近年は医学的な解明も進みつつある精神障害だが、都道府県によっては、重症かつ慢性的な精神障害者に対して専門家チームが訪問形式により医療や生活の総合的な支援を行うACT(包括型地域生活支援体制)や国のアウトリーチ推進事業(地域移行)も進みつつあるというのだが、その推進の条件となるのが精神病床数の削減。
結果として地域移行が促進されるのだから精神科専門の病床は不要になるはずであって、更にその先には医療費の削減という大命題が見え隠れする。が、その「あやめ会」の方々の話によれば本市の精神病床は他都市に比べて絶対数、単位人口対病床数ともに少ないことから一律的な削減を求められるのはおかしいのではないかとのこと。
「障害者自立支援法」は障害種別の格差是正以外にサービス提供主体を市町村に一元化したことが功績の一つ。そんな地域の実情に鑑み、国に対して物申せる川崎市でありたいと思うのだが...どうか。
(平成25年6月29日/1433回)
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