就活
田舎から弟が上京してきた。柔道一直線の弟はヤワラちゃんに憧れて帝京大学に入学。体躯は私よりも二回りは大きい弟も県大会では3位どまり。大学の柔道部では通用しなかったのか、私の紹介したアルバイトに夢中となった。
二人とも私大であって年間授業料も安くないはず、それに仕送りも結構な額をもらっていたから今に思えば両親には頭が下がる。今、自分が子ども達の為に同じことが出来るかと言われれば疑問符が付くだけに、改めて親の恩は忘れずにいたいものである。
さて、4年生になれば否が応にも周囲は就職活動でそわそわすることになる。「面接の達人」を片手にリクルートスーツに身を包んだ同級生が目立つ。当時はバブルもはじけ、就職氷河期といわれた厳しい状態。尚且つ、同世代人口が最も多い歳だけに就職競争も激化。景気回復まで様子を見ようと大学院に残る仲間もいるが、それが回復どころか更に厳しくなるとは思ってもみなかったのではないか。理系だけに大手メーカーが人気となるのだが、専攻が数学ではあまり好感されていないようでどこも狭き門。
もちろん私などは自らの将来など描ける訳もないし、収入があれば何でも良かった。長男だけに田舎の母親は郷里へのUターンと安定した企業への就職を希望していたらしく、そんなこともあってか父親が勤務していた銀行の採用試験を受けた。いわゆるコネ入社を期待した訳だが、その期待はもろくも崩れ去った。父の厳しさか実力不足か今以って分からないが、一つだけ言えることは結果としてそれが良かったということである。
そうそう、前回紹介したアルバイト先の会社からも正社員でどうかと破格の条件提示をいただいた。慣れすぎた私が入ったのでは会社の為にもならぬと丁重にお断りしたのだが、今以ってその厚意はありがたく思っている。そんなことから自然の成り行きで担当教授のすすめるままに中堅クラスの外資系企業の採用試験を受けることになった。
が、世の中はそんなに甘くはない。届いた不合格通知に本人もやむなしと思っていたのだが、担当教授がすごい剣幕で怒っているではないか。「彼のような優秀な学生を採用しないとは何事だ(優秀だったら採用されるのだが。。。)」と電話口で怒鳴っている。こんな私をそこまで買ってくれる教授の気持ちこそうれしいものの、再度、採用試験を受けるというのはプライドが許さない。
が、恥を忍んで面接に伺った。で、採用されることになるのだが、まぁこれまでの人生において就職の採用試験は決して順調とはいえないものであった。会社側に見る目がないのか、本人の実力不足か、いづれにしても世の中とは不条理なものと認識させられる。
でもその挫折が人を成長させる。決して社会が悪いとか、政治が悪いだとか、そちらのほうに不満が向くことが無かったことが救いかもしれない。えっ今の仕事は緒戦で通過したじゃないかって?。ってことはもしや天職かも(笑)。
(平成24年7月28日/1098回)
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