アカシアの咲く街
「あなたはまだ若い。一度、大連を訪れるといい」と言われたことがある。
もう10年以上前になるが、上海行き飛行機の隣の座席に居た好々爺からである。美しい街並みとともにアカシアが咲き誇る5月が見ごろらしい。
その旧満州国大連の生まれの86歳になる御大の話を聞く機会に恵まれた。農林水産省へ入省後、青森県庁勤務を経て、41歳の時に大手ゼネコンへの転職。異色の経歴の持ち主である。
元参議院議員の故井上孝氏と小学校から同級生という。旧建設省の事務次官経験者であって、国土庁長官を歴任し、晩年はわが地元の百合丘にて生涯を閉じた。
両名とも旧満州の小学校から大学まで同窓。縁というのは不思議なもので晩年の住処から墓まで同じ春秋苑だよと感慨深げに語る。
井上孝氏は私の郷里近くの寺の生まれ。
ってことは新潟県出身。何故に大連の小学校なのか。
父君が洋行中に培ったロシア語の能力を後藤新平氏に買われ、同氏が旧満州鉄道総裁の就任時に海を渡ったというもの。
当時はフロンティアスピリット(開拓精神)に溢れていた。旧満州鉄道は全長2千km。日本の国内基準と違う広軌道を採用することで、世界最速の蒸気機関車「特急あじあ号」を走らせたんだと熱く語る。
当時の夢とロマンが甦る。
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