うちへおいで
本市の介護認定「要介護5」の患者のうち、約半数が脳血管疾患という調査結果がある。
中でも遷延性重傷意識障害の患者は医療行為を必要とする為、介護施設の受け入れを拒否されることが多い。結果、病院や診療所がその役割を担うことになるのだが、医療機関には空きベッドがないのである。
脳血管疾患の患者には七沢温泉脳血管センター等が県内では有名だが、いかんせん遠いから地域で預かって欲しいとの希望もある。
そこで、地元の診療所を訪れたのだが、人工呼吸器を装着した寝たきり患者で満床である。これでは他の患者の受け入れどころではない。
拒否する介護施設には、万が一の場合は訴訟沙汰にもなりかねないから敬遠しておこうという思惑が働くのである。
さて、気管が十分に発達しないまま生まれる先天性気管狭窄という障害がある。
「気管切開」という手術をして、のどに穴をあけ、気道を広げるためにカニューレと呼ばれる管状の医療器具を入れているので、自力では痰(たん)を出せない。痰が詰まって窒息しないように、のどの穴からチューブを入れて吸引器で吸い取る作業が1日に数回欠かせない。
幼稚園や保育園への入園も拒まれることが多いのだが、保護者としては出来るだけ普通の生活を送らせたい。周囲の友達と同じ公立小学校への入学を希望する保護者から相談を受けた。
医療行為にあたる為、看護士又は保護者の付き添いなしに普通学級への入学を認めていないことが多い。
しかし、地元の小学校の校長先生。「うちへおいで」と誘ってくれた。
その言葉に家族がどれほど癒されるか。真の教育者である。
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